納戸

私にとってのジャングルジムは納戸だった。
狭い部屋に壁づけの棚が天井まで伸びていた。
天井には白熱電灯がジリジリと光っていた。
狭い納戸は右の棚に右足を、左の棚に左足を乗せて登ることができた。
狭い納戸は幼い私にとって、天井が高く思えた。
股を広げ、よじよじ棚を登る。
左右の棚には冬服や絵本や雛人形が片付けられていた。
その一つに一つに心を動かしながら、さらに上を目指す。
たくさんの物でぐちゃぐちゃの納戸を登るのは宝探しのようだった。
そして、上からの眺めはキラキラで知らないものでいっぱいだった。
少しの埃っぽさも気にせずに、最後の一段を踏む。
そこにはやはり、ウキウキとドキドキがあった。
ふと、僕が手を伸ばしたのはクリスマスツリーの星だった。
星を掴もうとした。
僕はその高さを忘れていた。
頭の上のじゅっと焼ける白熱電球の熱さに驚き、床に落ちたのだ。
私は泣きたくなった。
お尻の痛さとと天井の憎さに。
ジャングルジムのてっぺんは空を仰げるのに、ここでは無様にも堕ちる。
お日様でもないのに。
ただ、手の中のベツレヘムの星は、あたたかい光をうけ、てらてらと輝いていた。
その星が私のために光っているように思った。
それがなんだか僕を笑わせる。
あの星はまだ小さな納戸でてらてらと光っている。

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